京都市の風致地区に建てる住宅の建ぺい率や緩和条件は第2種、第3種などの地域によってかわる
京都市内には、風致地区に指定されている17の地域があります。
風致地区内で新築をご検討の際には、建築制限などによる影響を把握しておくことが大切です。
京都の風致地区内には地区の特性に応じた5つの種別があり、建物の高さや建ぺい率などの規制が定められ、それぞれ異なる申請が必要です。
さらに61の地域はより基準の厳しい特別修景地域に指定されています。
今回は、京都市の「風致保全計画」で定められている風致地区の制度について解説していきます。
コラムのポイント |
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目次
風致地区とは?
日当たりや風通し、プライバシーが確保できる静かで落ち着いた環境と、景観の美しさに恵まれた土地に家を建てたいという場合には、風致地区に家を建てるという選択肢があります。
京都市はほぼ全域が景観計画区域ですが、その中には条例によって風致地区に指定されている地域があります。
京都市が風致地区を指定する意味と、風致地区に新築を建てる際に知っておくべきポイントを確認していきましょう。
風致地区を指定する意味
風致という言葉は、「自然の景色などの趣、味わいを表す」という意味を持っています。
また風致地区は、都市部に残されている緑地や、水辺などの自然の景観を良い状態で維持する為にルールが定められている地区を指します。
人が快適に暮らすためには利便性が求められますが、同時に自然の恵みである景観や環境を守るための施策も必要です。
風致地区は、京都の歴史ある美しい街並みや豊かな自然を維持・保護するために定められています。
風致地区の概要
都市計画法において、10ha以上の風致地区は都道府県、又は政令市、10ha未満の風致地区は市町村の指定です。
建築物の建築、宅地の造成、竹木の伐採等については、都道府県、又は政令市が基準を定め、市町村はその基準に従って自治体が独自に規制します。
京都市は政令市なので、京都市が京都市の基準と規制を定めている地区は17あり、全体で約17,943ha(平成28年12月現在)に及びます。
風致地区の名称と面積 |
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地区名称 | 第1種地域 | 第2種地域 | 第3種地域 | 第4種地域 | 第5種地域 | 合計 |
相国寺 | ― | ― | ― | ― | 約 12 | 約 12 |
鴨川 | ― | ― | 約 88 | 約 129 | ― | 約 217 |
上賀茂 | 約 1,344 | 約 219 | 約 434 | 約 6.3 | 約 107 | 約 2,110.3 |
比叡山 | 約 1,303 | 約 45 | 約 45 | ― | 約 1.3 | 約 1,394.3 |
東山 | 約 1,966 | 約 272 | 約 201 | 約 14 | 約 124 | 約 2,577 |
醍醐 | 約 949 | 約 45 | 約 25 | 約 3.9 | 約 49 | 約 1,071.9 |
伏見桃山 | 約 107 | 約 24 | 約 13 | ― | 約 21 | 約 165 |
西国 | ― | ― | ― | ― | 約 2.5 | 約 2.5 |
嵯峨嵐山 | 約 3,528 | 約 351 | 約 68 | 約 10 | 約 32 | 約 3,989 |
西山 | 約 1,516 | 約 46 | 約 118 | ― | 約 37 | 約 1,717 |
北野 | ― | ― | ― | ― | 約 12 | 約 12 |
紫野 | ― | 約 7.6 | 約 36 | ― | 約 5.5 | 約 49.1 |
船山 | 約 510 | 約 21 | 約 16 | ― | ― | 約 547 |
鞍馬山 | 約 738 | 約 61 | 約 35 | ― | 約 22 | 約 856 |
大原 | 約 1,393 | 約 182 | 約 34 | ― | 約 15 | 約 1,624 |
大枝大原野 | 約 1,596 | ― | ― | ― | ― | 約 1,596 |
本願寺 | ― | ― | ― | ― | 約 3.6 | 約 3.6 |
合計 17地区 |
約 14,950 | 約 1,273.6 | 約 1,113 | 約 163.2 | 約 443.9 | 約 17,943.7 |
風致地区の種別及び面積(ヘクタール) |
引用:京都市情報館 風致景観の保全 最終更新日:2021年8月19日
風致地区内には、京都市長の許可が必要な行為が7項目あります。
- 建築物その他の工作物の新築,改築,増築又は移転
- 宅地の造成,土地の開墾その他の土地形質の変更
- 木竹の伐採
- 土石の類の採取
- 水面の埋立て又は干拓
- 建築物等の色彩その他の意匠の変更
- 物件の堆積
住宅を新築する際には、風致地区内で建物の高さや建ぺい率などの上限が定められた、第1種~第5種地域までの種別ごとの基準を知っておく必要があります。
>関連コラム:京都市の景観条例|内容、デザイン(色彩、高さなど)、該当地域などわかりやすく解説
風致地区内の建物の規模や敷地に関する基準
風致地区内における家づくりの際は、風致が調和する建物であることに加え、敷地内の緑地空間と隣家との距離を確保するために必要な建物の規模に関する基準について押さえておきましょう。
建築物の建ぺい率に関する基準
建ぺい率は、敷地内に住宅が占める面積の割合に対する基準です。
建築物の敷地面積に関する基準
「建築物の敷地面積」に関する基準には、緩和条件があります。
「特定狭小敷地」では、敷地全体の総合的なデザインが優れていると認められる場合に適用される可能性があります。
例)
- 屋根が日本瓦でふかれている建築物で、真壁造等の和風感が強調されている
- 門や塀、垣、植栽その他の外構の計画が風致の維持又は形成に資するものとして認められる
建築物の後退距離に関する基準
建築物の外壁や突出しバルコニー等と、通りの距離に関する基準です。
この基準にも、「特定狭小敷地」や「不整形敷地」などに対する緩和特例が設けられています。
建築物の敷地内の緑地に関する基準
敷地内の景観と周辺の景観が一体となって良好な景観にする為の基準です。
敷地内に、10㎡につき高木1本及び低木2本が必要です。
加えて、それらの樹木と調和する空き地として、草本類,地被類などの植物で被われている空地や、和風庭園内の園路、庭石、水面などの空地の確保も求められます。
その他、高木にはタイサンボクやクヌギ、低木にはクチナシやアジサイ、生垣にはイヌツゲなど、在来種を選び、高木は2.0m程度,低木は0.5m程度の高さを維持するなど、細かな規定があります。
建築物の高さに関する基準
建物の高さは、景観への影響が大きいため、景観影響評価資料やマスタープランの提出が求められるなど、他の基準に比べて緩和措置の条件が厳しくなっています。
擁壁や塀の高さに関する基準
住宅の高さと同時に擁壁、塀に関しても基準が設けられています。
隣家への日当たりや風通しを確保すると共に、景観への調和を図るための基準です。
住宅の外観を周辺の風致に調和させる為の基準
風致地区の景観に自然に溶け込む住宅にするため、外観のデザインや色に対して細かな基準が設けられています。
その中からいくつかの基準を見ていきましょう。
屋根に関する基準
種類
入母屋屋根・寄せ棟屋根・切り妻屋根
屋根材
- いぶし銀、光沢の少ない濃い灰色又は黒色の日本瓦、又は平板瓦
- 光沢の少ない濃い灰色又は黒色銅板、又は平形彩色スレート
- 濃い灰色,黒色又は濃紺色の太陽光発電装置のパネル
軒
長さ60㎝で、建築物の規模に応じて均整が取れていること
外壁に関する基準
外壁には建材、色、装飾に関する基準が設けられています。
外壁材
土壁・しっくい塗り・焼杉板張り・砂壁状吹き付け・目地が目立たないタイル張り
色彩
- 光沢の少ない薄茶色又は灰色
- 白しっくい塗り、焼杉板張りなら素材の色
- 色彩を複数にする場合は対比を目立たせない
- 外壁の表面に過度の装飾がなされていない
- 外観と調和する色とデザインのバルコニー
例えば、しっくい塗り以外の素材で真っ白な外壁の色は認められません。
また、近年人気の黒い外壁も使用不可のため注意しましょう。
外構に関する基準
門や塀
- 木製や竹製で素材の色を活かし着色しない
- コンクリートのブロック塀には砂壁状吹き付け等の仕上げをする
- 鉄や軽金属は格子状等の単純なデザインで、光沢が少なくこげ茶色、薄茶色、黒色、灰色のいずれかの色にする
例えば、門扉やガレージのシャッターに真っ白な軽金属は使えません。
今回紹介した基準は、全体の一部で、実際にはより細かいルールが多数定められています。
すべての基準を把握するのは大変ですが、風致地区に新築を計画する際には、施工を依頼する工務店からのサポートやアドバイスを受けながら、スムーズに家づくりを進めていきましょう。
>関連コラム:京都市の用途地域|用途地域マップの検索方法、問い合わせ先、住宅の規制など簡単解説
>関連コラム:京都市の高度地区とは|北側斜線制限の緩和、指定地区の地図などわかりやすく解説
特別修景地域について
風致地区内には、世界遺産や離宮周辺をはじめとする、さらにきめ細かい制限が設けられた地域があります。
【特別修景地域について】
市内62箇所の地域を指定しており,それぞれの地域の特性に応じて形態・意匠の基準の上乗せや建蔽率や後退距離等についての緩和措置を,地域ごとに設けています。
「特別修景地域」の中には,太陽光発電パネルの設置が許可されないなどの規制が厳しい地域もあります。
京都市の風致地区はどこにある?
京都市内17の風致地区は、以下の通りです。
- 相国寺風致地区:京都市上京区
- 鴨川風致地区:(詳細な場所の情報なし)
- 上賀茂風致地区:(詳細な場所の情報なし)
- 比叡山風致地区:(詳細な場所の情報なし)
- 東山風致地区:京都市東山区
- 醍醐風致地区:京都市伏見区
- 伏見桃山風致地区:京都市伏見区
- 西国風致地区:(詳細な場所の情報なし)
- 嵯峨嵐山風致地区:京都市西京区
- 西山風致地区:(詳細な場所の情報なし)
- 北野風致地区:京都市上京区
- 紫野風致地区:(詳細な場所の情報なし)
- 船山風致地区:(詳細な場所の情報なし)
- 鞍馬山風致地区:(詳細な場所の情報なし)
- 大原風致地区:(詳細な場所の情報なし)
- 大枝大原野風致地区:(詳細な場所の情報なし)
- 本願寺風致地区:京都市下京区
※京都市が2024年10月時点で公表している情報
「京都市都市計画情報等検索ポータルサイト」では、住所又は地図検索も可能です。
風致地区のより詳細な場所については、京都市役所の「景観政策課都市デザイン担当」or「風致保全課の窓口」(京都市役所分庁舎2階です)で確認するのがおすすめです。
>関連コラム:京都市の風致地区|条例の概要、風致地区はどこなのか、住宅建築時の申請内容など解説
風致地区で得られる豊かな暮らし
風致地区における厳しい制限は、豊かな自然と美しい景観のある環境を保全するために設けられています。
そのため、土地を購入した当時は静かで落ち着いた環境だったのに、数10年後にはマンションや商業施設が建ち並ぶといったリスクがありません。
特に、近年人気の平屋を計画している場合、周辺の環境変化により、日当たりや風通し、プライバシーの確保が難しくなるようなデメリットも避けられます。
京都でマイホームをご検討の際には、土地探しの段階から、風致地区に関する情報を集め、数多くの基準をクリアした家づくりを進めていく必要があります。
風致地区条例に関する申請手続きには、詳しい制限内容や書類様式の確認、スケジュール管理が必要になるため、ハウスメーカーや工務店で代理申請を依頼するのが一般的です。
京都の風致地区で新築をお考えなら、信頼できる地元の工務店で、土地探しや条例に合うプランの相談から始めてみましょう。
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>関連コラム:京都で注文住宅を建てるならどこがいい?|人気エリアや相場、おすすめ実例を紹介
まとめ
京都市では、伝統的な趣ある街並みや自然豊かな環境を守るために、地域独自の区分や内容で建築制限が設けられています。
そのため、日当たりや風通し、プライバシーが確保できる静かで落ち着いた環境と、美しい京都の景観が楽しめる土地をお探しなら、風致地区にマイホームを建てるのがおすすめです。
ぜひ、地元の風土や制度をよく知る、設計建築のプロと一緒に地域と調和する、おしゃれで快適な住まいを実現させましょう。
京都市での注文住宅は地元に強い工務店で!
京都市に住宅を新築する際には、全国どの地域にもある都市計画法の他に、京都独自の景観に対する基準を踏まえて家づくりを進めなくてはなりません。そのため、京都市の景観条例を熟知している地元の工務店での家づくりが安心です。
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