木造住宅の寿命が鉄筋より短いのは日本だけ?京都の工務店が解説
「木の家に住みたいが寿命が短いのでは…?」と思う人は少なくありません。なぜなら法定耐用年数と混同して勘違いしている人や、築数十年で建て替えやリフォームをする住宅が多い状況を見て、誤解している人が多いからだと考えられます。
ただ、実際には木造住宅の寿命は100年以上継続させられます。木造住宅の本来の寿命について考えていきましょう。
寿命の長い木造住宅にするポイント |
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目次
木造住宅の寿命と法定耐用年数の違い
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>>>京都市左京区|新築 | DKC幡枝北
寿命の長い木造住宅にする為には、高い耐久性を持たせる必要があります。高い耐久性を持つ家とは、耐用年数の長い家を指します。ここで木造住宅は耐用年数が短い家と誤解してしまう人がいるのは、物理的な耐用年数と税法上の耐用年数を勘違いしていることが原因です。
固定資産税の計算や住宅の売買に際して、公平を期す為に木造住宅には22年という耐用年数が定められています。これはあくまでも資産価値的な面から考える耐用年数であって、住宅の劣化状態の限界を表す年数ではありません。
法定耐用年数は住宅の劣化状態の限界を表す年数ではないとは言っても、周りには築25~30年でリフォームをしたり、建て替えをしたりする人が多いと思われる方が多いことと思います。
その現実が、日本の木造住宅の寿命は短いという考えをする人を増やしているのではないでしょうか?確かに国土交通省統計を見ると日本の木造住宅の寿命は30年という調査結果が出ています。
日本では、1950年以前に建てられた住宅で現存している住宅が5%であることに対し、イギリスでは4割を超えているという結果も出ています。
引用:国土交通省 日本の住宅は長持ちしない
木造住宅の寿命が短いとされる理由
法隆寺などの有名建築物は別枠と考えたとしても、100年以上現存する木造の民家があるにも関わらず、近年の木造住宅にはなぜ、30年前後の寿命しかないと言われるのでしょうか?
時代の流れと住宅の温熱環境の変化
この数十年、日本の住宅に求められる温熱環境は変化し続けています。近年は家庭での消費エネルギー削減という観点から、政府も省エネ住宅を推進しています。その結果、日本の住宅は寒い家から、暖かい家へと変わり続けています。
その為、「結婚した子供夫婦と同居するのを機に、断熱性の高い住宅に建て替えよう」というように、まだまだ住宅としては耐用年数が長いのに建て替えたり、断熱リフォームをしたりするケースは少なくありません。
耐震性への法改正
建築基準法には住宅の地震への備えとして耐震基準が設けられています。この基準は、1981年6月に大改正された新耐震基準という基準です。そして現在までの間には、大地震が発生する度に行われる調査結果を踏まえ、改正が繰り返されています。
その為、築年数が長くなった住宅では、耐震改修のリフォームをしたり、建て替えをしたりするケースがあります。
昭和56年以前に建築された建物は、建築基準法に定める耐震基準が強化される前の、いわゆる「旧耐震基準」によって建築され、耐震性が不十分なものが多く存在します。
断熱施工によって耐震性が低下
昭和から平成にかけての時期には急激に住宅の断熱が普及した為、不十分な施工により内部結露が発生、その結果、耐震性が低下するという住宅も数多く建築されてしまいました。本来の日本の住宅には、冬は寒いが通気性に優れているという特徴がありました。
日本の住宅の通気性を担っていた要素には、木材や塗り壁、畳などの自然素材と、数多くの窓、襖や障子の開閉の幅の調整で家中の空気を循環させられる間取り、基礎の部分にも空気が通る床断熱等が挙げられます。
ところが、昭和から平成にかけての時期には石油由来の建材が多く使われ、個々のプライバシーを重視する居室を細かく区切る間取りが増え、基礎の断熱工法も変化しました。
その一方、断熱と同時に気密性を高め、機械換気を効率よく働かせるといった部分は、十分に進化していませんでした。
その結果、内部結露による耐震性の低下だけではなく、空気環境が悪化しシックハウス症候群が発生するなどの事態が引き起こされたことも、築30年程度で建て替えやリフォームをする原因のひとつであったのではないかと考えられます。
暮らしの変化に対応できない間取り
家は長く暮らす場所です。その長い年月には、出産、子供の成長と独立、家を建てたご夫婦の現役からのリタイアなど、何度か大きなライフステージの変化が訪れます。ところが、細かく居室を区切る間取りには、暮らしの変化に対応できないという問題点があります。
そして、昭和から平成にかけての時期に多く見られた細かく居室を区切る間取りは、現在の家での過ごし方にはあわないと感じるご家族が増えています。近年は家にいる時間のほとんどは家族揃ってリビングで過ごすというライフスタイルのご家族が増えているからです。
そのようなご家族にとっては、玄関から直行できる広々としたリビングが好まれます。ただ、細かく居室を区切る間取りは変更への融通が利きにくく、大掛かりなリフォームが必要になってしまいます。その結果、建て替えに近いほどのリフォーム費用がかかるなら、建て替えてしまおうと決断されるケースもあります。
室温の調整にかかるエネルギー量の多さ
日本の住宅では長い間、採暖という方法で暖を取ってきました。人がいる場所だけ暖めるという方法です。火鉢などは使われなくなりましたが、炬燵は今でも多くのご家庭で使われているのではないでしょうか?
そしてエアコンは居室ごとに取り付け、使用する都度、稼働させるという使い方がされていました。この居室ごとにエアコンを稼働させる方法と断熱性の低さが組み合わされると、冷暖房は多くのエネルギーが消費されます。
快適な室内環境を少ないエネルギーで創り出す為には、熱を出入りさせない住宅性能に加え、採暖ではなく暖房ができる間取りが必要です。その両方を兼ね備える家にする為に建て替えをするケースもあります。
木造住宅の寿命を決める新築時の4つの重要ポイント
寿命の長い家には、物理的な劣化を抑えられることの他に、暮らしやすさが続くことが大切です。そして、子や孫の代まで快適に安全に暮らせる寿命の長い家になるかどうかは、新築時に4つの要素を満たしている必要があります。
室内環境
健康・快適・省エネという3つの観点から、断熱性・気密性・調湿性・換気が必要です。この全ての要素を備える為には、住宅性能を高めることの他に、適切な湿度の調整や通気の良さを担う自然素材、家全体の温度を均一に管理できる冷暖房ができる間取りが求められます。
可変性
暮らしの変化に対応できる設計と間取りが、住み続けられる年数を無限に長くします。ライフステージや家族構成の変化に合わせて、手軽なリフォームで暮らしやすさが続く家は寿命の長い家です。
耐震性
いつまでも長く暮らせる家には、快適性や可変性以外に、地震に対する備えも大切です。地震大国の日本においては、なくてはならない性能です。
メンテナンス
世界で最も古い木造建築物である法隆寺は、建築された年から1300年以上経つ今でもその美しい姿を保っています。素晴らしい建築技術であったことは間違いありませんが、それに加えて、丁寧なメンテナスが欠かさず行われていることも長寿の理由です。
同じように、どんなに優れた住宅であっても劣化は発生します。クロスの褪色など目に見える劣化以外に、目に見えない部分にも劣化は発生します。目に見えない部分の劣化は、耐震性を低下させたり、室内環境を良い状態に維持できなくなったりといった状況を引き起こします。
そのような状況になる前に定期的なメンテナンスをすることが、子や孫の代まで快適に安全に暮らせる寿命の長い家の維持に繋がります。しかしながら、メンテナンスを度々しなくてはならない上に、メンテナンスの度に高額な費用がかかるとしたら、果たしてメンテナンスを定期的に続けることはできるのでしょうか?
そのような住宅は寿命の長い家とは言えません。住宅にメンテナンスは欠かせません。だからこそ、メンテナンスの周期が長いことと、高額な費用をかけずにできることが、本当の意味での寿命の長い家を生みだします。
木造住宅は決して寿命の短い家ではありません。ただし、新築時の計画、そして設計や施工によって、どれだけ快適な状態が維持される家なのか、また、暮らしの変化に対応できる家なのかどうかは変わってきます。
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