京都市の景観条例が注文住宅に与える影響とは?

京都市の景観条例

注文住宅とは何も制限のない自由な家づくりです。もちろん、自治体の定める建ぺい率や容積率、高さ制限などを守り、予算内で計画を進める必要はあります。それでも、戸建て住宅を新築する方法の中で、最も自由度の高い家づくりです。

ただ、京都市での注文住宅には条例による景観に対する色や屋根の形状、建築資材などの制限が少なからずあります。その制限の中で、理想の家を実現させる為、条例の内容を確認していきましょう。

 

京都で住宅の外観と条例の関係を理解するポイント
  • 京都には個人の住宅の外観デザインに対しても基準が定められています。
  • 基準による制限を踏まえて家づくりを進めなくてはなりません。
  • 太陽光発電は推奨されていますが太陽光パネルも条例の基準を守る必要があります。

 

京都市の景観条例 一戸建て住宅の外観デザインへの基準

京都市の景観条例を守った注文住宅の外観

京都市は伝統的な建築物が数多くあり、その貴重な建築物は周囲の自然の景観と調和して、古都としての美しさを長年維持してきました。その美しさを守り続けることは、京都市のみならず、日本の文化を継承していくという意味でとても大切なことです。

その為、京都市では建築物に対しての様々な基準が定められています。建築物とは公共の大規模な建物への基準だけではなく、個人の戸建て住宅に対しても住宅や屋根の形状、色などに対する基準が設けられています。

この基準には、全ての地区で共通する基準(共通基準)と景観地区別の基準(地区別基準)があります。それぞれの基準を確認していきましょう。

屋根に関する共通基準

種類 入母屋屋根・寄せ棟屋根・切り妻屋根
勾配 伝統的な木造家屋が残る町並みと調和する勾配として10分の2~10分の6の切妻屋根や寄棟屋根が基本
屋根材

 

  • いぶし銀、光沢の少ない濃い灰色又は黒色の日本瓦、又は平板瓦
  • 光沢の少ない濃い灰色又は黒色銅板、又は平形彩色スレート
  • 濃い灰色,黒色又は濃紺色の太陽光発電装置のパネル

 

  • 長さ60センチメートル
  • 建築物の規模に応じて均整が取れていること

モダンなデザインで屋根にかける費用を抑えられることで、多くの住宅に採り入れられている片流れ屋根や、アウトドアリビングを楽しめる陸屋根は採用できません。

色について

暖色系、寒色系に関わらず明るい色の屋根も許可されません。

勾配について

歴史遺産型や旧市街地型等の美観地区では,京町家などで多く見られる屋根の勾配である10分の3~10分の4.5までにすることが求められます。

軒について

近年は箱型で軒のない家、軒の出が短い家もありますが、京都市では軒の出の深さが求められます。深い軒は外観デザインに落ち着きを与えることがその理由です。

そして、それだけではなく軒は日射遮蔽という大切な役割も果たし、夏の室温上昇を抑える働きをするので省エネに繋がります。ただ、駅の周辺などの狭小地では、軒の深さに関して緩和される場合もありますので、市への確認が必要です。

外壁に関する共通基準

外壁材

 

土壁・しっくい塗り・焼杉板張り・砂壁状吹き付け・目地が目立たないタイル張り

 

色彩

 

  • 光沢の少ない薄茶色又は灰色
  • 白しっくい塗り、焼杉板張りなら素材の色
  • 色彩を複数にする場合は対比を目立たせない
  • 外壁の表面に過度の装飾がなされていない
  • 外観と調和する色とデザインのバルコニー

素材の色を活かす外壁が求められます。白く塗装した外壁は認められませんが、しっくい塗りの白色は許可されます。砂壁状吹き付けや目地が目立たないタイル張りの外壁の場合には落ち着いた淡い色調が求められます。赤やオレンジ、黄色、緑などの色や黒色の外壁は許可されません。

主要な外壁には次の色彩を使用しないこと。ただし,着色を施していない自然素材については,この限りでない。 (1)R(赤)系の色相で,彩度が6を超えるもの (2)YR(黄赤)系の色相で,彩度が6を超えるもの (3)Y(黄)系の色相で,彩度が4を超えるもの (4)GY(黄緑)系の色相で,彩度が2を超えるもの (5)G(緑)系の色相で,彩度が2を超えるもの など

引用:京みやこの景観ガイドライン ■建築デザイン編

住宅設備機器に関する共通基準

クーラーの室外機や給湯器等の設備機器
  • 設備機器の前面に格子等を設置する
  • 色彩を外壁色と合わせ、住宅と調和させる

京都市内には自然と歴史の景観が織りなす美しさを備えた地域と、京都駅周辺などのオフィス街があります。

さらに自然と歴史の景観が織りなす美しさを備えた地域には、山ろく型美観地区、山並み背景型美観地区、岸辺型美観地区(一般地区・歴史的町並み地区)、旧市街地型美観地区、歴史遺産型美観地区、沿道型美観地区、市街地型美観形成地区、沿道型美観形成地区といった特性の異なる地区があります。

その為、屋根や外壁などに対するデザインの基準には、共通基準の他に、地区の特性に応じて定められた地区ごとの基準があります。

家づくりの為に土地を購入する際には、共通基準に加え、購入する土地が属している地区の基準を確認しておくことも大切です。

京都市地球温暖化対策条例と太陽光発電について

京都市景観条例の基準を満たした太陽光発電パネル

景観条例で屋根の形状や色が厳しく制限されている京都市ですが、太陽光発電のパネルを搭載することは許可されています。ただし、色と設置方法に注意する必要があります。

勾配屋根の基準(共通基準)

パネルの色 黒,濃い灰色,濃紺色(原則として彩度2以下のもの)
黒又は濃い灰色
配管及び配線等の色 屋根や外壁の色と同等色にする
高さ 建築物の棟の高さを超えない
設置方法 屋根に密着させる

屋根面とパネルに隙間ができる場合は,軒先に黒色のカバーを設置する

さらに、地区ごとに追加される基準があります。

地区別の共通基準に追加される基準

美観地区及び美観形成地区 ・ 風致地区 パネルを形よくまとめ,屋根の形にあわせて配置
歴史遺産型美観地区・風致地区特別修景地域のうち,許可基準において「日本瓦葺き和風外観とすること」の定めがある地域 瓦に近い幅のパネルを屋根の形にあわせて,段状に設置

また、太陽光パネルと設置できない地域もあります。

太陽光パネルと設置できない地域

歴史遺産型美観地区 歴史的景観保全修景地区 祇園町南,祇園縄手新門前,上京小川
歴史遺産周辺や歴史的な景観が継承されている参道や門前 下鴨神社参道,岩倉実相院参道,毘沙門堂参道など
伝統的建造物群保存地区 祇園新橋,上賀茂社家町,産寧坂,嵯峨鳥居本
歴史的風土特別保存地区 嵯峨野,嵐山,稲荷山等

引用:京都市情報館 太陽光パネルの景観に関する運用基準 

京都市の太陽光発電に対する考え方

京都市では京都市の景観を守ることと温暖化対策としての省エネ住宅の促進を並行して進めていく考え方です。

京都市では脱炭素社会を目指して京都市地球温暖化対策条例を定めており、その一環として、太陽光パネルの設置を進めています。ただ、景観への悪影響がないよう、景観規制区域ごとに細かく基準が設けられています。その為、新築する地域に合わせて、太陽光パネルの設置の方法と色を遵守する必要があります。

そして、大規模な建築物に対する義務規定だけではなく、個人の戸建て住宅に対しても10㎡以上の規模である場合には「建築士による再生可能エネルギー利用設備の設置の促進」という義務規定が設けられています。

このことから、個人の住宅への太陽光パネル設置の義務はありませんが、景観に影響しない方法での太陽光パネルを設置する住宅を増やしていく方針であると考えられます。

京都市での注文住宅は地元に強い工務店で!

京都の地元工務店で建てる注文住宅

京都市に住宅を新築する際には、全国どの地域にもある都市計画法の他に、京都独自の景観に対する基準を踏まえて家づくりを進めなくてはなりません。その為、京都市の景観条例を熟知している地元の工務店での家づくりが安心です。

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