京都市の風致地区に建てる住宅の建ぺい率や緩和条件は第2種、第3種などの地域によってかわる
京都市内には風致地区に指定されている地域が複数あります。この風致地区に住宅を新築する際には、様々な制限を守らなくてはなりません。
風致地区内は第2種、第3種などの5の地域に分かれており、建ぺい率などの基準や緩和条件が異なり、それぞれ申請が必要です。さらに61の地域はより基準の厳しい特別修景地域に指定されています。
コラムのポイント |
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目次
風致地区とは?
日当たりや風通し、プライバシーが確保できる静かで落ち着いた環境と、景観の美しさに恵まれた土地に家を建てたいという場合には、風致地区に家を建てるという選択肢があります。京都市はほぼ全域が景観計画区域ですが、その中には条例によって風致地区に指定されている地域があります。
京都市が風致地区を指定する意味と、風致地区に家を建てる際に知っておかなくてはならないことについて確認していきましょう。
風致地区を指定する意味
風致という言葉は、自然の景色などの趣、味わいを表すという意味を持っています。そして風致地区とは、都市部に残されている緑地や、水辺などの自然の景観を良い状態で維持する為にルールが定められている地区を指します。
人が快適に暮らす為には利便性が求められますが、利便性だけを求めて都市計画を進めてしまうと、自然の恵みである景観や環境が徐々に失われてしまう恐れがあります。
そのような状況を防ぎ、より良い状態で自然の景観を残す為に、風致地区が定められています。
風致地区の概要
都市計画法において、10ha以上の風致地区は都道府県、又は政令市、10ha未満の風致地区は市町村が指定することになっています。建築物の建築、宅地の造成、竹木の伐採等については、都道府県、又は政令市が基準を定め、市町村はその基準に従って自治体独自の規制をすることとされています。
京都市は政令市なので、京都市が京都市の基準と規制を定めている地区は17あり、全体で約17,943.7haに及びます。
風致地区の名称と面積 |
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地区名称 | 第1種地域 | 第2種地域 | 第3種地域 | 第4種地域 | 第5種地域 | 合計 |
相国寺 | ― | ― | ― | ― | 約 12 | 約 12 |
鴨川 | ― | ― | 約 88 | 約 129 | ― | 約 217 |
上賀茂 | 約 1,344 | 約 219 | 約 434 | 約 6.3 | 約 107 | 約 2,110.3 |
比叡山 | 約 1,303 | 約 45 | 約 45 | ― | 約 1.3 | 約 1,394.3 |
東山 | 約 1,966 | 約 272 | 約 201 | 約 14 | 約 124 | 約 2,577 |
醍醐 | 約 949 | 約 45 | 約 25 | 約 3.9 | 約 49 | 約 1,071.9 |
伏見桃山 | 約 107 | 約 24 | 約 13 | ― | 約 21 | 約 165 |
西国 | ― | ― | ― | ― | 約 2.5 | 約 2.5 |
嵯峨嵐山 | 約 3,528 | 約 351 | 約 68 | 約 10 | 約 32 | 約 3,989 |
西山 | 約 1,516 | 約 46 | 約 118 | ― | 約 37 | 約 1,717 |
北野 | ― | ― | ― | ― | 約 12 | 約 12 |
紫野 | ― | 約 7.6 | 約 36 | ― | 約 5.5 | 約 49.1 |
船山 | 約 510 | 約 21 | 約 16 | ― | ― | 約 547 |
鞍馬山 | 約 738 | 約 61 | 約 35 | ― | 約 22 | 約 856 |
大原 | 約 1,393 | 約 182 | 約 34 | ― | 約 15 | 約 1,624 |
大枝大原野 | 約 1,596 | ― | ― | ― | ― | 約 1,596 |
本願寺 | ― | ― | ― | ― | 約 3.6 | 約 3.6 |
合計 17地区 |
約 14,950 | 約 1,273.6 | 約 1,113 | 約 163.2 | 約 443.9 | 約 17,943.7 |
風致地区の種別及び面積(ヘクタール) |
風致地区内には京都市長の許可の必要な行為が7項目あります。
- 建築物その他の工作物の新築,改築,増築又は移転
- 宅地の造成,土地の開墾その他の土地の形質の変更
- 木竹の伐採
- 土石の類の採取
- 水面の埋立て又は干拓
- 建築物等の色彩その他の意匠の変更
- 物件の堆積
この中で、住宅を新築する際に知っておかなければならない項目は、風致地区の中でも第1種~第5種地域という5つの地域に分けられ、個別に地域ごとの規制が定められています。
風致地区内の建物の規模や敷地に関する基準
具体的には、風致の調和する建物であることに加え、敷地内の緑地空間と隣家との距離を確保する為に必要な建物の規模に関する基準が設けられています。
建築物の建ぺい率に関する基準
建ぺい率は、敷地内に住宅が占める面積の割合に対する基準です。
建築物の敷地面積に関する基準
この基準には緩和条件が付いています。「特定狭小敷地」においては、敷地全体の総合的なデザインが優れていると認められる場合や、屋根を日本瓦でふくなど、建築物等が和風外観であると認められる場合にのみ,あくまでも条例別表の建ぺい率の基準を基本としながら、やむを得ない範囲で緩和されることがあります。
建築物の後退距離に関する基準
建築物の外壁や突出しバルコニー等と、通りの距離に関する基準です。この基準も、特定狭小敷地や不整形敷地などに対して、緩和の為の特例が設けられています。
建築物の敷地内の緑地に関する基準
敷地内の景観と周辺の景観が一体となって良好な景観にする為の基準です。敷地内に、10平方メートルにつき高木1本及び低木2本が必要です。加えて、それらの樹木と調和する空き地として、草本類,地被類などの植物で被われている空地や、和風庭園内の園路、庭石、水面などの空地も求められます。
その他にも高木にはタイサンボクやクヌギ、低木にはクチナシやアジサイ、生垣にはイヌツゲなど、在来種を選び、高木は,2.0メートル程度,低木は,0.5メートル程度の高さを確保するなど、細かな規定があります。
建築物の高さに関する基準
高さは景観への影響が大きい為、景観影響評価資料やマスタープランの提出が求められるなど、他の基準に比べて緩和措置の条件が厳しくなっています。
擁壁や塀の高さに関する基準
住宅の高さと同時に擁壁、塀に関しても基準が設けられています。隣家への日当たりや風通しを確保すると共に、景観への調和を図る為の基準です。
住宅の外観を周辺の風致に調和させる為の基準
風致地区の景観に自然に溶け込む住宅にする為、外観のデザインや色に対して細かな基準が設けられています。その中からいくつかの基準を見ていきましょう。
屋根に関する基準
種類
入母屋屋根・寄せ棟屋根・切り妻屋根
屋根材
- いぶし銀、光沢の少ない濃い灰色又は黒色の日本瓦、又は平板瓦
- 光沢の少ない濃い灰色又は黒色銅板、又は平形彩色スレート
- 濃い灰色,黒色又は濃紺色の太陽光発電装置のパネル
軒
長さ60センチメートル、建築物の規模に応じて均整が取れていること
外壁に関する基準
外壁には建材、色、装飾に関する基準が設けられています。
外壁材
土壁・しっくい塗り・焼杉板張り・砂壁状吹き付け・目地が目立たないタイル張り
色彩
- 光沢の少ない薄茶色又は灰色
- 白しっくい塗り、焼杉板張りなら素材の色
- 色彩を複数にする場合は対比を目立たせない
- 外壁の表面に過度の装飾がなされていない
- 外観と調和する色とデザインのバルコニー
例えば、しっくい塗り以外の素材で真っ白な外壁の色は認められません。また、近年人気が出ている黒い外壁も認められません。
外構に関する基準
門や塀
- 木製や竹製で素材の色を活かし着色しない
- コンクリートのブロック塀には砂壁状吹き付け等の仕上げをする
- 鉄や軽金属は格子状等の単純なデザインで、光沢が少なくこげ茶色、薄茶色、黒色、灰色のいずれかの色にする
例えば、門扉やガレージのシャッターに真っ白な軽金属は使えません。
これらの基準はほんの一部で、実に細かいルールが多数定められています。これらのルールをすべて把握することは大変なことです。風致地区に新築を計画する際には、施工を依頼する工務店との綿密な打ち合わせが、スムーズな家づくりに繋がります。
特別修景地域について
風致地区内には、特別の許可基準が設けられた61か所の特別修景地域があります。
風致地区は,本市の市街地の周囲を囲む三山の麓を中心に,第1種地域から第5種地域までの5種の種別に分けて,合計17地区17,938.1ヘクタールを指定しています。
そのうち,建築物等の高さ,建ぺい率などについて,特に配慮が必要な地域で,当該地域の特性に応じた特別の制限を行う必要がある地域については,市長は,条例第6条の規定より,特別修景地域として指定し,建築物等の高さ,建ぺい率,後退距離,位置,規模,形態及び意匠並びに緑地の位置,形態及び規模について,条例第5条第1項の規定による基準(以下「一般基準」という。)を強化し,緩和し,又は付加することができるとされています。
京都市の風致地区はどこにある?
自治体によっては。風致地区はあるが、利便性という面から考えると、暮らしにくいという地域もあります。京都市では、交通や買い物の利便性の良い地域内にも風致地区が存在します。詳しくは下記からご確認いただけます。
風致地区の住宅が得られる暮らしの豊かさ
風致地区には厳しい制限がある為に、自然と景観の美しさに恵まれた環境が調っています。また、土地を購入した当時は静かで落ち着いた環境だったにもかかわらず、十年後にはマンションや商業施設が増え、暮らしにくい土地になってしまったというようなリスクがありません。いつまでも良い環境が維持される地域です。
特に平屋住宅を計画されている場合、平屋は周辺の環境によって、日当たりや風通し、プライバシーの確保が難しくなってしまうことがありますが、風致地区ではそのような心配がありません。
その為、日当たりや風通し、プライバシーが確保できる静かで落ち着いた環境と、景観の美しさに恵まれた土地に家を建てたいという場合には、風致地区に家を建てるという選択肢があります。
ただ、京都市の風致地区はどこにあるのか、また土地が見つかった際にも、土地購入から実際の建築プランまでの経過に、数多く設けられている基準をどのようにクリアしていくのか、申請はどのようにするのかなど、風致地区に家を建てる際には問題が山積みです。
その為、新築住宅を計画する際には、風致地区に関する条例を熟知している施行者に依頼することが重要になってきます。静かで落ち着いた環境の地域に土地を購入して、暮らしやすい家を建てたいという場合には、お気軽にご相談ください。
京都市の地元の工務店として、土地探しから京都市の条例をクリアする住宅の建築まで総合的にお手伝いさせていただきます。
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