【2025年施行】建築基準法改正の完全ガイド|家づくりにどんなメリット・デメリットがあるのか?
2022年に決議された建築基準法の改正案が2025年に施行される予定です。
そこで今回は、家づくりへの影響を知るために押さえておきたい、建築基準法の基本や2025年からの改正ポイントを分かりやすく解説します。
新築・リノベーション予定がある方向けに、建築基準法改正の背景や改正後のメリット・デメリットも紹介しますので、ぜひマイホーム検討時の情報収集にお役立てください。
このコラムのポイント |
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目次
建築基準法とは
建築基準法改正の詳細を解説する前に、まずは建物の安全性や住環境の向上を目的にした「建築基準法」の規定について理解しておきましょう。
住宅建築に関わる法律について
建築基準法は、国民の生命や健康、財産を守り、公共の福祉を増進させる目的で、1950年に建築物の敷地や構造、設備、用途に関する最低限の基準を制定した法律です。
実際の設計や建築、申請書類の作成は、建築会社が行うケースがほとんどですが、お施主様も法律の内容を理解しておくことで、家づくりがスムーズに進められます。
建築基準法の「単体規定」と「集団規定」
建築基準法の規定内容は、大きく分けて「単体規定」と「集団規定」の2種類です。
- 「単体規定」: 全国的に適用される、建物そのものの安全性や衛生状況などに関する規定。
- 「集団規定」: 都市計画区域や準都市計画区域で適用される、建物と都市の関係性に関する規定。
■「単体規定」の内容
建物自体の安全性や衛生状況を最低限守るための規定で、主な内容は以下の通りです。
- 敷地に関する規定
- 構造耐力に関する規定
- 防火・避難に関する規定
- その他一般構造や設備に関する規定
その他一般構造や設備に関する規定では、採光や換気に関する規制や建築材の品質、アスベストなどの飛散に関する規制が設けられています。
■「集団規定」の内容
都市計画と建築物を整合させるための規定で、主な内容は以下の通りです。
- 接道規制
- 用途規制
- 形態規制
接道規制では、災害時や避難時に緊急車両が通る道を確保する「接道義務」が定められ、用途規制には、地域ごとの主たる活用方針に応じて13の「用途地域」が設定されています。
また、都市計画区域や準都市計画区域では、密集市街地対策の一環として、高さ制限や建ぺい率・容積率、外壁の後退距離などに関する、通常の建築物より厳しい制限が設けられています
>関連コラム:京都市の用途地域|用途地域マップの検索方法、問い合わせ先、住宅の規制など簡単解説
2025年施行予定の「建築基準法の改正」ポイント
建築基準法改正の背景には、温室効果ガス46%削減(2030年)やカーボンニュートラル(2050年)などの「省エネ対策」の義務化が挙げられます。
また、省エネ対策の1つでもある木材の利用促進や、倒壊・火災リスクの防止対策につながる、建物の安全性の強化や品質向上が求められています。
実際の施行は、2025年4月からの予定で、家づくりのプランニングにも影響が出る可能性があるため、早めに改正内容を理解しておくことが大切です。
①四号特例の縮小
今回の改正で特に大きく取り上げられているのが「四号特例の縮小」です。
四号特例は、特定の小規模建築物に対する規制緩和の措置ですが、2025年からは「審査省略制度」の縮小により、構造規定や省エネ基準の適合性を調べる、建築確認検査が必要になります。
画像引用:国土交通省|建築確認・検査の対象となる建築物の規模等の見直し
具体的には、これまで審査が省略されてきた、木造2階建や平屋(建築面積200㎡以上)の住宅や、大規模改修(リフォーム・リノベーション)*でも審査・確認申請が必要になります。
*屋根や外壁、階段、間取りなどの外観や構造に関わる部分の半分以上を変更するリフォーム・リノベーション
四号特例の縮小は、省エネ住宅の増加促進を目的とするだけでなく、太陽光発電などの省エネ設備の導入による建物の重量化に備えた、より高い安全性の構造基準が求められるためです。
②構造計算が必要な木造建築物の規模変更
政府が進める、中規模以上の建築物に対する木造化・木質化と、近年の高断熱な住宅の増加に伴う階高の高い建物のニーズが増す傾向に合わせた改正があります。
まずは、簡易的な構造計算(許容効力度計算)で建築可能な建物の高さが以下のように変更されました。
「簡易的な構造計算で建築できる高さの範囲拡大」
現行:高さ13m以下かつ軒高9m以下
→改正後:階層3以下かつ高さ16m以下
一方で、大空間を有する木造建築の増加に伴う、高度な構造計算が必要な延べ床面積の引き下げがある点にも注意が必要です。
「木造建築物で構造計算が必要な延べ床面積の規模」
現行:延べ床面積500㎡超(1・2階建の場合)
→改正後:延べ床面積300㎡超
③大規模建築物における防火規定の合理化
2021年10月1日施工の「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」*とともに、その対象が「公共の建築物」から「一般の建築物」にまで拡大されました。
*通称:都市の木造化推進法
建築基準法の改正では、この木造化推進法に合わせて、床面積3,000㎡超の建築物が木造構造である場合、柱や梁などの構造である木材を「表し」にできるのがポイントです。
「大規模建築物における木造構造部の仕様」
現行:壁や柱、床など、露出している部分を耐火構造にする、あるいは3,000㎡ごとに耐火構造体で区画分けする。
→改正後:火災時に周囲に大きな影響を及ぼさないよう処置を施せば、木材の「表し」を活かした設計が可能になる。
「改正後の木造化方法の導入例」
- 大断面材の使用(燃えしろ設計法)
- 防火区画の強化
- 延焼の抑制が可能な構造計画
「表し」が可能になることで、大規模建築物における内装木質化のハードルを下げ、さらに自由で優雅なデザインの住まいが実現しやすくなります。
画像引用:国土交通省 住宅局|改正建築基準行
④中層建築物以上の別棟部耐火性能基準の合理化
近年、増加傾向の木造中層建築物における耐火性能基準が合理化され、階層が5以上9以下の最下層部分に接する別棟は、90分間の耐火性能を有すれば、木造建築が可能になりました。
「現行」:階層3以下の低層部について、階層4以上の高層部と一体的に防火規定が適用され、建築物全体としての耐火性能が求められます。
画像引用:国土交通省 住宅局|改正建築基準行
「改正後」:高い耐火性能のある壁などの採用により、離隔距離を有する渡り廊下で別棟区画分けすれば、別棟扱いとして、低層部分の木造化が可能になります。
画像引用:国土交通省 住宅局|改正建築基準行
⑤既存住宅における高さ制限・建ぺい率・容積率の特例
既存住宅に対する規定では、省エネ改修の弊害につながらないよう「高さ制限・建ぺい率・容積率」に関する特例許可制度が追加されます。
リフォーム・リノベーション時の屋根の断熱化や太陽光発電の設置に伴う建物高の変更や、日よけのための屁の設置による建ぺい率上限に抵触するケースなどを想定した対策です。
「既存住宅における高さ制限・建ぺい率・容積率の特例」
現行:
- 第一種低層住居専用地域等や高度地区では、原則都市計画によって定められた「高さ制限」を超えてはならない。
- 都市計画区域等内では、原則都市計画によって定められた「容積率・建ぺい率」の制限を超えてはならない。(制限の例外は限定的)
→改正後:
- 第一種低層住居専用地域等や高度地区の「高さ制限」について、屋外に面する部分の工事による制限超えが、構造上やむを得ない建築物に対する特例許可制度を新設。
- 都市計画区域等内の「容積率・建ぺい率」について、屋外に面する部分の工事による制限超えが、構造上やむを得ない建築物に対する特例許可制度を新設。
⑥用途変更に伴う住宅採光規定の見直し
今回の改正では、近年増加傾向の既存建物の用途変更ニーズに合わせた、最低採光面積の緩和規定の追加もポイントになります。
建築基準法の採光面積確保の条件による費用面での障壁により、改修実行されないケースが多く見られたことに関する、既存建築物の有効活用を目的とした措置です。
「既存建築物の用途変更における必要最低採光面積の緩和」
現行:住宅の居室において、床面積の1/7以上の採光に有効な開口部面積の確保が必要です。
(例:採光規定の対象外である事務所やホテルから住宅に用途変更する場合)
→改正後:原則、現行の措置(政令で規定予定)をとりつつ、一定の条件*を満たせば、採光に有効な開口部面積の確保が、床面積の1/10以上までの緩和が可能になります。
*開口部からの採光量に並ぶ照明設備の設置など
ただし、採光面積の緩和条件は現在検討段階であり、照明器具設置などの条件はあくまで予定として、理解しておきましょう。
⑦既存不適格建築物における現行基準適用の一部免除
空き家が社会問題として深刻化する中、現行の建築基準法に適用しない既存不適格建築物も増えてきています。
そのため、省エネ改修や耐震改修へのニーズがあっても、現行の接道義務や道路内建築制限に抵触する可能性が高く、リフォーム・リノベーションを断念する事例も増加傾向です。
建築基準法の改正では、一部の既存不適格建築物に対して、省エネ化・長寿命化を目的とした規定の免除が盛り込まれます。
「既存不適格建築物に対する現行基準適用の免除」
現行:増改築・大規模修繕等の場合は、現行基準である、根本的な改善や建築確認申請が必用。(実質的に不可能なケースがある)
→改正後:市街地環境への影響が増大しないと認められる「大規模修繕・大規模模様替え」の場合(政令で規定予定)は、現行基準の適用が求められない。
改正により、今後古い建物の価値を高めるリフォーム・リノベーションがより実現しやすくなります。
>関連コラム:京都市の風致地区に建てる住宅の建ぺい率や緩和条件は第2種、第3種などの地域によってかわる
2025年の建築基準法改正のメリット・デメリット
>施工事例:京都市左京区|モデルハウス|光が降り注ぐ吹抜けリビングとアウトドアリビングのある省エネ快適分譲住宅
最後に、2025年の建築基準法改正による、家づくりへの影響を分かりやすくメリット・デメリットでまとめてみましょう。
建築基準法改正によるメリット
2025年の改正により、木造住宅の構造審査が義務付けられるため、建物構造の安全性がより確保されやすくなります。
また、建築基準法の「耐震等級1」が義務となり、どの建築会社に依頼する場合でも、2000年施行の法律における耐震性能が、どの住宅でも保証されるようになります。
建築基準法改正によるデメリット
四号特例の縮小による構造計算の範囲拡大で、構造計算書の作成費用や行政の審査、構造関連の資料を集めるための期間が必要になる可能性があります。
また、改正内容に対応するための知識や技術が必要になるため、各種計画や申請に時間を要するケースも増えることが予想されます。
そのため、家づくりを始めるタイミングや建築会社、設計士との打ち合わせに関しては、早めに余裕のあるスケジュールを立てておくことが大切です。
>関連コラム:2025年から義務化される?省エネ住宅基準適合とは|省エネ住宅の基準や種類、性能について
まとめ│2025年からの家づくりで大切な建築基準法の改正ポイント
これからの家づくりにおいては、2025年施行予定の改正内容をよく理解し、適切な対策を講じることが求められます。
また、今回解説した改正ポイント以外にも、より細かい規定変更がされている部分もあるため、実際のプランニングでは、設計士・建築士や各自治体の担当者に確認するのがおすすめです。
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